神奈川新聞記者「参政党街宣に、聴衆や支持者を上回る規模の抗議市民が集まった」と主張。神谷代表「法規制が必要…」に長文を投稿

矢部真太／神奈川新聞記者
@shintayabe_257

最終更新　午前9:20 · 2025年8月9日
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昨日、新宿駅前で行われた参政党の街宣には、聴衆や支持者を上回る規模の抗議市民が集まったとみられます。現地には訪れていないため、SNSに投稿される動画などを確認したところ、抗議に対して身体的に接触し、腕で拘束したり押し倒そうとする行為などに及んだ「警備」と名札をつけた演説スタッフや支持者がいることも確認されています。

批判的な意見や抗議が公道で行われる演説に対して発せられるこの事案について、しばしば参政党の党員や支持者はSNSで「法整備するしかない」と投稿し、神谷宗幣代表も「法規制が必要ですね」と新宿での動きを受けてXに投稿しました。8月1日の会見と同様、異論は封じて構わないーという、まさに「言論弾圧」と捉えられかねない主張を繰り返しています。

また「メディアや言論人、政治家がこの問題に触れるかで彼らのレベルがわかる」「参政党はリトマス試験紙」などと発信。こうした言説は、批判や抗議の声を民主主義の一部として受け止めるのではなく、「味方か敵か」を測る道具として扱っていることを示します。そして、このような言動を公党のトップに立つ権力者が発することは、支持者の結束のみを呼びかける犬笛となり、この社会の分断をもたらしています。

もちろん演説に対する抗議への賛否などさまざまな意見が存在していることは承知しています。意見の表明方法やプラカードの文言やデザインなどについても意見もあるでしょう。この日本という国において表現の自由が保障されている以上、さまざまな意見表明の形が保障されていることも事実です。

このような抗議が行われている背景を考えてみましょう。参院選後、神谷代表や松田前代表は「我々は差別を許さない政党だ」と主張していますが、それは虚偽です。参院選から外国人を劣位に置く「日本人ファースト」を掲げ、事実無根のデマを主張し、外国人差別を煽ってきました。実際に世論が形成されている事実からは目が話せません。また性的少数者に対しても神谷代表は「LGBTはいらない」などの発言を繰り返しています。障がい者や高齢者への差別や医療否定まで主張してきた事実があります。

差別や選別、抑圧を平然と行う公党に対して抗議が行われることは日本の歴史を振り返っても何ら不自然なことではありませんし、事実、さまざまな抗議が行われてきました。そして、その抗議は実力行使を一切伴わない市民の非暴力不服従の抵抗と言えるでしょう。

しかし、ここで問わなければならないのは――なぜ神谷氏が発言する「法整備」は、批判や抗議をする市民にだけ適用され、自分たちには都合よく作用する形で想定されているのか、ということです。仮に将来、彼ら自身が政権や権力者、政党に抗議したくなったとしても、その“自分たちで望んだ法”によって声を上げる自由が奪われるかもしれないことは明白です。「参政党を批判するのは違法」――というような条文を記せるとでもお考えなのでしょうか。思想信条によって選別できるという考えなのでしょうか。

日本国憲法第19条は「思想及び良心の自由」を保障しており、これは「何を考え、何を信じるかは個人の自由であり、他人が干渉することは許されない」というものです。また憲法21条は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と明記し、さらに「検閲は、これをしてはならない」と規定しています。

そして人権を守るというのは、本来「自分と意見が同じ人」の権利だけでなく、「自分と意見が異なる人」の権利も守ることを意味します。もし異論や抗議を法で封じ込める社会を是とするなら、それは統制構造と何ら変わりません。「民主主義が脅かされている」と神谷氏は別の投稿で主張しますが、そもそも民主主義は、意見の衝突や不快な発言さえも包含しながら機能させていくものです。

つまり、神谷氏がちらつかす「法整備」というのは、気に入らない声や批判を法で封じること自体が、憲法に反するものだと理解できるのは容易なことです。そこから「都合の悪い声」を切り捨て始めた瞬間に、「自由」ではなくなることは容易に考えられ、それは民主主義ではなく、異論を封じ込める全体主義です。つまり、表現の自由だけでなく、この国で曲りなりにも築いてきた戦後の民主主義社会そのものを放棄することに繋がります。

※>>2-　以降に続く

ってことだわ