金融所得課税の増税が持論の岸田政権幹部を抑えることができるのか　安倍の死去で「事実上の政権交代」

　この「変質」を追うために、いったん時計の針を岸田首相の発足直後まで戻してみよう。自民党総裁選挙に勝利し、内閣総理大臣に就任、そして組閣をするところまでの岸田首相は、これまでの「安倍・菅」政権と距離を置こうと考えていた。

　自民党役員・閣僚人事という「第1ラウンド」で、安倍氏は最側近の萩生田光一経済産業相を岸田首相とのパイプ役に仕立てあげた「萩生田官房長官、高市早苗・自民党幹事長」を期待した。

　だが、岸田氏は首を縦に振らなかった。そして、安倍氏が率いる同じ清和政策研究会でも、安倍氏とは犬猿の仲だった福田康夫元首相の長男、達夫氏を党総務会長に抜擢した。

　さらに、外務相から幹事長に就いた茂木敏充氏の後任には、日中友好議員連盟会長を務めた親中派の林芳正氏を起用した。林氏は次期衆議院選挙において、安倍氏の地元・山口の選挙区で公認を争う可能性があった安倍氏の「天敵」だった。

　岸田内閣の組閣直後、安倍元首相は党内外の各方面に連絡を入れ、側近の猟官運動の失敗への怒りを隠さなかった。安倍氏が推した「萩生田光一官房長官、高市早苗幹事長」案は、岸田首相に無視されたのだ。

　岸田氏の「カウンターパンチ」を浴びた安倍氏は「分かっていないな」などと周囲に不満を爆発させていった。そして、岸田政権を力づくで誘導する「第2ラウンド」で猛烈な攻勢を仕掛けたのだ。

　新型コロナウイルス対策を柱とする補正予算案の財政出動規模から北京五輪への外交的ボイコットまで積極的に発信。さらには、翌年夏に控えていた今回の参院選と憲法改正の国民投票を同日実施することも「一つのスケジュール」などと発言し、岸田首相の「外堀」を埋めにかかった。

　対する岸田首相だが、看板政策である「新しい資本主義」は、分配を優先させるなどとしていたが、頓挫。「デジタル田園都市国家構想」などは言葉が躍るだけで、独自色もなければ、これで地方が成長するとも思えない。

　岸田首相はこれまでの答弁で、「しっかり」「検討」などの言葉を使って、丁寧に答えるそぶりは見せる。ところが、実際には提案を受け入れず、具体策を示さない対応を繰り返していった。

　前出の政治部デスクはこう解説する。

　「主導権を握ろうと外堀を埋めていった安倍元首相に対して、岸田首相は高い内閣支持率を維持しながらも政策的にはリーダーシップをまるで発揮できなかった。決定的だったのは、ロシアによるウクライナ侵攻だろう。これまでプーチン大統領と親しい関係にあった安倍元首相だが、毅然とウクライナ支持を表明。岸田首相もこれに従った」

>>9
全て
私の
想像です