警察を「ウイルス」と呼称　決済は現金、対策入念―スカウト集団、年商数十億円か・警視庁

国内最大規模の風俗向けスカウトグループ「ナチュラル」の幹部が逮捕された事件で、同グループが警察当局を「ウイルス」と呼び、逮捕された場合の供述内容をスカウトにあらかじめ指南するなど、組織防衛策を徹底していたことが２１日、捜査関係者への取材で分かった。

　報酬の支払いや、紹介料の受け取りなどはほぼ現金だったことも判明。警視庁は、年商数十億円に上り、一部が暴力団に流れていたとみて実態解明を急ぐ。
　捜査関係者によると、ナチュラルは路上で声を掛けた女性を数千の風俗店やキャバクラに違法に紹介し、紹介料を得ていた。活動拠点は東京・歌舞伎町を中心に、北海道から熊本県までに及び、所属するスカウトは１０００人以上に上るとみられる。
　グループ運営を担う「本社機能」には、警察対策を担う「ウイルス対策課」や、組織内の連絡用アプリを開発する「アプリ課」を設置。担当業務ごとに総務課や契約課、集金課と称する部署も置いていた。
　警察対策では、顧問弁護士の連絡先をスカウトに事前に伝達。摘発された場合は「組織の存在を明らかにせず、すぐ弁護士に連絡する」「罰金は組織が払うので、スカウト行為の事実は認め、早期の略式起訴を目指す」という趣旨の指示を出していた。
　仲間内でも身元が分からないように別名を名乗らせ、逮捕されたメンバーの捜査から組織の全体像を把握されにくいようにしていた。
　紹介手数料の回収やスカウトの報酬などはほぼ現金で決済しており、資金の流れを不透明にする狙いがあったとみられる。実績に応じてスカウトを「研修生」「社員」「ダイヤモンド」などとランク分けし、中には報酬が月１０００万円に上るメンバーもいたという。
　警視庁は昨年１２月、暴力団や薬物の取り締まりなどを担う組織犯罪対策部と、繁華街や風俗店の対策を担う生活安全部を連携させた約３０人態勢の「タスクフォース」を発足。暴力団がスカウトや風俗店を収益源にしている疑いがあるとみて、取り締まりや実態解明の司令塔機能を担ってきた。
　同庁幹部は「近年、暴力団などに所属しない犯罪集団が治安対策上の脅威となっている。部門の垣根を越えて情報を集約、分析し、取り締まりと実態解明を進めていく」としている。

時事通信　2023年11月22日07時18分
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