「国連女性委にカネ出さない」政府をマイノリティーが批判 国際条約あるのに内向き「対抗」パフォーマンス

「国連女性委にカネ出さない」政府をマイノリティーが批判　国際条約あるのに内向き「対抗」パフォーマンス：東京新聞デジタル
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2025年2月1日 06時00分
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日本が国連側に支払う拠出金の使途から、女性差別撤廃委員会を外すという政府の措置が波紋を広げている。同委員会が昨年10月に出した勧告に、男系男子に皇位継承を限る皇室典範の改正が含まれたことへの対抗措置だというが、女性を巡るさまざまな問題に取り組んできた人々は偏狭な対応に憤る。反ジェンダーの動きを刺激しかねない政府の姿勢は、差別撤廃とどんな整合性があるのか。（太田理英子、木原育子）

◆異例の対抗措置　委員の訪日も取りやめに

　「確定した勧告を削除させるのはおかしい。建設的対話を通じて互いに理解していくべきではないのか」。1月30日、東京・永田町の参院議員会館で、市民団体のメンバーや野党議員が、外務省担当者に迫った。

外務省は前日、皇室典範を巡り、国連の女性差別撤廃委員会から改正の勧告を受けたことへの対抗措置を発表。同委員会の事務を担う国連人権高等弁務官事務所（OHCHR）に年2000万～3000万円支払っている任意拠出金の使途から、同委員会を除外するよう求める異例の内容だった。予定されていた委員会委員の訪日プログラムも取りやめた。

急きょ設定された外務省との面談で、市民団体は「意に沿わないから拠出金使用を制限するという報復的対応は、人権先進国がなすべき行いではない」とし、撤回を求める申し入れ書を担当者に手渡した。メンバーらは措置決定の経緯の説明も求めたが、担当者は「政府内での議論は説明できない」などと繰り返し、踏み込んだ回答はなかった。

◆「稚拙で強硬的、国益を損ねる」

「こんな稚拙で強硬的な措置は、女性差別撤廃を進めない国との印象をさらに固定化させかねず、国益を損ねる」。選択的夫婦別姓制度の導入を訴える一般社団法人「あすには」の代表理事で、申し入れに参加した井田奈穂さんは語気を強めた。実は記録がある2005年以降、日本の拠出金は同委員会に充てられていない。それでも制限を表明したのは「明らかに外交的圧力。人権機関との対面プログラムまで遮断し、これが通例となればジェンダー平等の取り組み自体が進まなくなる」と危ぶむ。

申し入れに加わった「女性差別撤廃条約実現アクション」の柚木康子共同代表は「誰がこんな恥ずかしい措置を決めたのか、明らかにされるべきだ」とし、今後も政府側との説明や対話の場を求めるという。

◆日本も締結している女性差別撤廃条約

批判が強まる中、外務省の担当者は31日、「こちら特報部」の取材に「現時点で決定の見直しはしていない。女性活躍や男女共同参画に取り組む姿勢は変わらず、委員会との協力も継続していく」と答えた。

同委員会は、女性差別撤廃条約の履行状況を監視する国連の専門機関。各国の政府の報告書や市民団体の意見を参考に女性の人権状況を審査し、改善点を勧告する。日本は1985年に同条約を締結している。

◆皇室典範だけに注目すると、多くの知恵が埋もれる

昨年10月、スイスで実施された同委員会の日本への対面審査に市民団体の一員として参加した群馬大の高井ゆと里准教授（倫理学）は「条約を締結している以上、勧告の誠実な履行は条約上の義務だ」と断じる。
自身は審査で、性的少数者の権利保障を訴えた。勧告は、トランスジェンダーの人が法的な性別変更をする際に手術を求める特例法の見直しのほか、選択的夫婦別姓制度導入や人工妊娠中絶での配偶者同意の撤廃など、多岐にわたる分野で改善を迫っただけに「皇室典範の問題だけ注目されることで、ほかの勧告で得られた多くの知恵が埋もれてしまいかねない」と懸念する。

◆マイノリティーにとって「必要なプロセス」

　政府の対抗措置の発表後、X（旧Twitter）では、「幼稚な対応」などと非難の声が相次いだ一方、「国連脱退」が一時トレンド入りするなど、委員会や国連への反発も見られた。
国際機関の勧告を尊重しない傾向が強まれば、少数者の権利保護にも影…

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