深圳・日本人男児刺殺事件に乗じて大阪の台湾系学校に日本人弁護士を騙る悪質脅迫メール、日台「離間」が目的か

深圳・日本人男児刺殺事件に乗じて大阪の台湾系学校に日本人弁護士を騙る悪質脅迫メール、日台「離間」が目的か

中国・深圳で日本人男子児童（10）が中国人の男（44）に刺殺された事件の余波が、思わぬところに及んでいる。

大阪市浪速区にある大阪中華学校（蔣燁校長）に、著名な日本人弁護士の関係者を騙った、同校児童らへの危害をほのめかす脅迫電子メールが届いていたことが9月26日までに関係者らの証言でわかったのだ。

・脅迫メールが届いたのは台湾系の学校
同校は台湾の華僑関連業務の最高機関・僑務委員会の承認校で幼稚園、小学校、中学校教育が行われており、日本人児童も多数在籍している。

通報を受けた大阪府警浪速署では、メールが海外アカウントを通じて送られたことを確認。同校周辺のパトロールを強化している。同校は関西における日台友好交流の場としても知られている。
　
同校関係者によると、脅迫メールは、深圳で中国人の男に刺された日本人男児の死亡が報じられた19日の翌20日、同校ホームページ記載の問い合わせ用メールアドレスを通じて届いたという。

著名な日本人弁護士の関係者などを騙り、同校の児童らに危害を加えることをほのめかしており、同校ではこれを受けて地元の大阪府警浪速署に通報した。

・メールの発信元は海外のアカウント
当初は深圳の日本人男児刺殺事件を受け、中国大陸系の学校と誤認した日本人による嫌がらせも疑われたが、府警では海外アカウントから送付されたものであると確認。

同学校周辺の関係者らは、「日本人の誤認を装って、台湾系の学校の児童らに危害を加えると脅し、日台の友好感情の離間をはかった認知戦の可能性もある」と指摘している。

このため同校では9月24日、「有関校園安全通知」（学校の安全に関するお知らせ）と題する蔣燁校長名義の通信文を園児、児童、生徒を通じて保護者に配布。

「最近深圳で起きた日本人児童視察を受けて校内の警備を強化し、登下校の際の安全確保措置を講じます」とし、「当校は9月20日、子供たちの安全を脅かす内容のメールが届きました。ただちに大阪府警浪速署に通報しましたが、警察ではこの電子メールが外国のアカウントを用いて送られたものであると確認。著名な日本人弁護士の関係者らを装った意図不明の悪意あるメールだと判明しました」と経緯を説明。

捜査にあたっている大阪府警がすでに園児、児童、生徒の登下校の安全確保のため同校周辺でパトロールを強化していることなども紹介し、過度に神経質にならず、冷静に対処するよう呼びかけるとともに、学校の安全対策強化への協力を求めている。

・良好な関係にある日台の市民感情を揺さぶる狙いか
大阪中華学校は終戦翌年の1946年創立。現在は在阪の台湾（中華民国）系華僑らが中心となった学校法人大阪中華学校（連茂雄理事長）が運営している。

台湾の華僑関連業務の最高機関である僑務委員会の承認を受けており、台湾・教育部の方針を基礎に「民族精神の発揚」「日華親善の促進」「生活知能を充実させる」「科学知識を培養する」といった方針を掲げ、中国語、日本語、英語教育にも定評があることから2022年集計では日本在住の台湾系住民だけでなく中国大陸系や日本人子弟など計200人以上が幼稚園、小学校、中学校部門に在籍している。

また同校の校庭では1、2月の春節（旧暦正月）の時期に、在阪の台湾出身華僑・華人らの親睦や、地域住民らとの交流深化などを目的にした「中華民国留日大阪中華総会」主催の「大阪春節祭」が開催されることでも知られており、台湾の文化に親しめる機会、日台友好・交流の舞台として毎年多くの人々でにぎわっている。

地元住民らは「単なるいたずらかもしれないが、海外アカウントからというのが気になる。日台間の良好な市民感情を揺さぶりたい国のサイバー部隊による工作かもしれない」「児童らの安全を脅かすような行為は絶対に許せない」などと怒りの声が噴出している。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/83384