【社会】第6波にらみ手探りで進む「ウィズコロナ」　関西4府県でも行動制限緩和の実証実験

大阪府の吉村洋文知事＝石川将来撮影

第6波にらみ手探りで進む「ウィズコロナ」　関西4府県でも実証実験
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20210930-00000071-mai-soci

　新型コロナウイルス対応の行動制限の緩和に向けた政府の実証実験が10月、関西の4府県でも行われることになった。実験ではワクチン接種証明などを活用し、飲食店やイベントでの制限を緩めて感染リスクが高まらないかチェックする。「第6波」をにらみ、「ウィズコロナ」の取り組みが手探りで進む。

　◇「食の街・大阪の復活を」

　「感染が広がりやすい大都市の大阪で、どうやって新型コロナと共存を図るのかという意味で有意義だ」。実験に参加する意向の吉村洋文・大阪府知事は、その意義をそう評価する。

　吉村知事の反応は素早かった。政府が行動制限緩和策を発表した9月9日の当日、実験に参加する考えを明らかにした。吉村知事のコロナ対策は、感染防止と同時に社会経済活動も重視するとのスタンスだ。特に大阪の飲食業界では2020年11月以降、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などによって営業時間や酒類提供の制限が続いており、「食の街である大阪を何とか復活させたい」との思いがある。イベント関係にも目を向け、クラスター（感染者集団）が昨春に発生したライブハウスも実験の対象とする意向を示す。

　実験は、大阪市内の繁華街の飲食店が候補で、府の認証店数十店舗で行われる見込み。来店客1グループあたりの人数や営業時間の制限を撤廃し、感染リスクの変化を確かめる方針だ。ライブハウスも人数制限をなくしての営業が可能か検証する。

　関西では斎藤元彦・兵庫県知事も「少しずつ日常に戻していくためにも参加する意義がある」と主張。神戸市内の飲食店を対象にする方向で国と調整している。西脇隆俊・京都府知事も「日本料理店で参加する」と前向きだ。兵庫、京都両府県も4月以降は緊急事態宣言やまん延防止措置が繰り返され、飲食店は大きなダメージを受けてきたことが背景にある。三日月大造・滋賀県知事も参加する考えを表明している。政府は大阪、兵庫、京都、滋賀の4府県の飲食店と、大阪のライブハウスで実験する方針だ。

　今回の実験は、緊急事態宣言下でも経済活動をストップさせないことが狙いの一つだ。「第5波」で発令された宣言は9月30日をもって終了だが、専門家の間では再び感染が拡大して第6波が来ることが懸念されている。そうしたなかでも、政府は日常生活を維持する方策を探っている。

　◇専門家「有益だが、注意も必要」

　大阪健康安全基盤研究所の朝野（ともの）和典理事長は「どの程度の緩和なら安全かというボーダーラインを把握することは、社会経済活動の再開に有益だ」と実験自体は評価する。その上で、「実験では良い結果が出ても、感染拡大が進んだり、別の変異株が広がってワクチン接種後の『ブレークスルー感染』が相次いだりする可能性もある。実験時とは違う『変数』が加わった時にも安全が担保できるのかを慎重に判断する必要がある」と注意点を指摘した。

　実験で求めることとして、可能な限り多くのデータを集めて統計的に有意な検証とすることや、店によって酒類提供の時間に差を付けるなどさまざまな条件で比較することを挙げた。さらに、利用者にとっては感染リスクが高い環境にさらされるため、「実験参加者から十分な合意を得るなど倫理的な課題も解決する必要がある」と語った。【石川将来】

　◇行動制限緩和の実証実験

　新型コロナウイルスの感染対策と日常生活の両立に向け、政府が10月中の2～3週間程度、北海道から沖縄県まで13道府県で実施する。対象は飲食店やライブハウス、スタジアム。ワクチン2回接種済み証や検査陰性証明書を持参した人に対し、飲食店がクーポン券を付与し、ライブハウスなどでは収容人数の制限を緩和。利用者の感染状況を追跡調査するほか、施設運営への影響を調べる。