米中学生の学力、コロナで低下　人種で格差広がる

【ニューヨーク=西邨紘子】全米教育統計センター（NCES）が21日発表した学力調査によると、中学2年生に相当する13歳の読解と数学の学力が新型コロナウイルス流行前と比べて大幅に下がったことが分かった。特に数学はもともと学力が低い生徒の落ち込み幅が大きく、人種別では低所得層が多い先住民や黒人、ヒスパニック（中南米）系の低下が目立った。コロナ禍を経て学力格差が広がっている様子が浮き彫りとなった。

NCESは数年おきに「国民の成績表」と呼ぶ全米学力調査（NAEP）を実施している。今回発表したのは、同じテスト項目を使って過去との学力を比較する「長期傾向調査」で、1970年代からデータを集めている。

2022～23年度の調査は、22年10～12月にかけて全米8700人の13歳を対象に読解と数学の2項目で実施した。読解の平均点は500満点中256点、数学は同271点で、前回実施の19～20年に比べて読解は4ポイント、数学は9ポイントそれぞれ低下した。平均点は読解が1975年以来、数学が90年以来の低水準だった。

19~20年比での学力の低下は、読解、数学とも幅広いグループで見られた。読解では成績や人種別で落ち込み幅に差が少なかった。これに対し、数学は格差が大きく、最下層のグループの成績低下幅は中程度のグループの約2倍に及んだ。数学では先住民や黒人、中南米系のグループの落ち込みが白人やアジア系に比べ大きかった。

米国の子どもの学力低下は近年、大きな社会問題になっている。10年前の2012年と最新の調査結果を比べると、平均点は読解で7点、数学で14点低下した。コロナ禍を経て学力低下に弾みがかかった形だが、遠隔授業へのサポートや家庭でのストレスなど複合的な要因が背景にあるとみられる。

NCESのペギー・カー長官は今回の調査結果について「ほとんどの学生が対面学習に戻って2年以上たったが、我々が期待していた学力回復の芽吹きが見受けられない」と危機感を示した。コロナ流行で大きな影響を受けた世代については「学力の急激な低下や学校環境の変化、メンタルヘルス問題の増大などを注意深く観察していく」と述べた。

日本経済新聞　2023年6月22日 5:36
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN21E8I0R20C23A6000000/