「桜」も「ドリル」も不起訴…政治家本人の立件が難しい理由とは　キーワードは「共謀」

「桜」も「ドリル」も不起訴…政治家本人の立件が難しい理由とは　過去の例から見えたキーワードは「共謀」

　東京地検特捜部は19日、自民党安倍派と二階派の家宅捜索に着手した。特捜部のメスが入った政治資金を巡っては、過去にも収支報告書への虚偽記入や不記載が発覚。会計責任者を務める秘書らだけが立件されることも少なくない。今回はこれまでのケースより多額で、組織的に裏金づくりをしていた疑いもあり、政治家の関与があったのか特捜部には全容解明が求められる。
◆薗浦健太郎氏は「共謀」を認定された
　政治家が立件されたケースでは、日本歯科医師連盟（日歯連）からの1億円献金隠し事件がある。会長代理だった故・村岡兼造元官房長官が政治資金規正法違反罪で在宅起訴された。ただ、派閥会長の橋本龍太郎元首相らは不起訴だった。
　特捜部は昨年12月、パーティー収入などを収支報告書に正確に記載しなかったとして、薗浦健太郎・元自民党衆院議員や会計責任者だった秘書ら3人を略式起訴。立件額は収支合わせて約4900万円だった。秘書らから報告を受けていたことなどから薗浦氏の共謀を認定した。
◆小渕優子氏も安倍晋三元首相も「嫌疑不十分」
　政治家の立件はハードルが高い。安倍晋三元首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用を補塡（ほてん）した問題で、公設第1秘書だけが略式起訴され、安倍氏は嫌疑不十分で不起訴になった。ドリルによる証拠隠滅が疑われた小渕優子衆院議員の資金管理団体を巡る事件でも、会計責任者の秘書ら2人は在宅起訴で、小渕氏は嫌疑不十分で不起訴になった。
　政治資金規正法は収支報告書の提出義務を会計責任者に課しており、虚偽記入や不記載があった場合、まずは会計責任者が処罰対象となる。会計責任者に不正を指示するなど「共謀」を認定できなければ、政治家は立件できない。特捜部は今後、裏金づくりの指示役や目的などを調べるとみられる。（加藤益丈）

東京新聞　2023年12月20日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/296958